土曜、日曜、それから、それから…

 土曜はビリーの実家のワイナリーにて、娘レナのお誕生会。レナは何と、この度18歳! 親戚を中心に集まったガーデンパーティは和やかで楽しいひとときだった。
レナの義弟の3歳児ヴァレンティンもやって来ると言うことで、香音は朝から大はしゃぎだ。レナの友人ギャル達を前に電車でもずーっとおしゃべりしたり踊ったりして、到着後もビリーの両親をOpa!Oma!(おじーちゃん、おばーちゃん)と、実に伸び伸びとしている。何度目かの訪問ではあるが、そこまでリラックスするとは…(苦笑)。
結局、バーベキューパーティで一品作ることになり、キッチンで格闘していたパーティ中も、香音はずっと主賓のレナのお隣でギャル達やビリーに面倒を見てもらいながら楽しく会食していた模様。

パーティ自体はつつがなく、和やかにほのぼのとしていたけれど、快晴のこの日は実はこの村で、大掛かりな自転車レースが開催された。村の中心から葡萄畑をぶらぶら5分と歩くおうちは、まったく静かでレースがあることも気がつかない程度だったけれど、問題は車が無いと生活がほとんど成り立たない田舎町で、レースのために大規模な交通規制が引かれていたこと。朝から到着した我々もあやうく駅からのバスに乗りそびれるところだったし、問題は近隣の村やウィーン市内から車でやってくる人々。開始予定時刻4時が近づくと、おうちの電話は鳴りっぱなしだった。食材の買い出しも村のマーケットに行けず、裏技として隣町のマーケットへ葡萄畑を抜けて出かけた。とは言え、誰もが結局ちゃんと辿り着けて、日暮れまで庭でゴロゴロしたり談笑したり、楽しい時間を過ごせた。

日暮れが近づいて(って8時は過ぎてるんだけど)、大婆ちゃん、おばちゃんなどの親戚重鎮の老女達が帰りはじめ、ビリーのお父さんと、ウィーンから来ていたディータのお父さんは、客間でワールドカップを観戦しはじめた。ドイツ対ポルトガル。香音は「ふたりのOpa!」と追いかけて、テレビの横で絵本を広げている。ビリーのお母さんが「カノンは見てるからいいわよ」と言ってくれて、私はビリー&ディータ、そしてレナとその女友達3人がBarに繰り出すのに同行した。ここからブラブラ歩いて10分ほどで、大きな湖がある。水辺はコテージやらレストランが並んで、イッパシのリゾート然としている。その中のひとつ、埠頭の先にあるBarに行って乾杯。気持ちの良い夜。
のもつかの間、ゆっくり一杯飲んだら大人チーム三人はワイナリーへ戻り、ギャルズは更にナイトスポットへと消えて行った。
映画の話なんかしながら、ぶらぶら歩いて戻った頃、試合は終わりディータのお父さんが車でウィーンに戻るのに乗せてもらう。
香音は客間から降りて来て、Omaに絵本を読んでもらっていた。「もう遅いから泊まっていけばいいのに」と何度も言って頂きつつ、明日は幼稚園のお友達と泳ぎに行く約束もしているし、せっかく帰りの便があるんだからと、後ろ髪を引かれつつ帰路に。高速道路を飛ばして小一時間。ディータの父上はおうちのそばまで送ってくれた。香音は熟睡。メールを開くと、明日の計画メールが届いていて、香音にはやっぱり帰ってきてやって良かったなとホッとして就寝。



 日曜、お昼頃に通い慣れたU4に乗ってヒュッテルドルフへ。
幼稚園へ通ったルートにすぐ気づいた香音は、ココは何駅?ココは?とちょっとワクワクしている。
幼稚園で仲良しに成ったサラとアセイエ、数ヶ月ぶりで合流。サラは間もなく7歳、アセイエも秋には6歳、ちょっと会わない間にしっかりしたなぁと思っていたら、母エリザベツにも「カノンが成長してる!」と大喜びされた。
エリザベツはVWの大きなワンボックスを乗り回していて、子連れで合流しても広々とみんなで移動できる。絵本やらなんやらもごちゃごちゃと常備されていて、半時間ほどのドライブはみんな機嫌良く楽しく。ウィーンの端っこから、車で森を抜け山に入り、山頂の人造池のプールへ。レストランと農場が所有する池に手を入れて、いっぱしのスイミングプールにしているところ。天然水のプール、と言うことでカルキで気分が悪くなる私には嬉しい限り。山の上にぽつんとあって、感じの良い場所だけど人出は日曜なのにそこそこでラッキー、と思ったけれど、エリザベツは「あらー、やっぱり7月の日曜ねー混んでるワー!」と言う(笑)。
香音はまだまだプール遊びはひとりでは楽しめないので、水の中で抱っこしてプカプカしたり何だカンだと手がかかるけれど、それでも喜んでバチャバチャして楽しく過ごした。
レストランが経営、ということで持ち込みの飲食がダメなのだけど車の中ならOKということで、ワゴンの中にテーブルを出してピクニック。こういう車は便利だなー。持ち寄ったパンやハム、ソーセージに丸ごとバスケットに持ってきたトマト、キューリ、ニンジンなどを皆でもしゃもしゃ食べる。ゆで卵も分け合い、リンゴも切り分け、バナナ食べたいひと?ハーイ…。あんまり楽しかったので、来週も是非、じゃ今度はおにぎり作ってくるわ、良いプールがあるって聞いたことがあるのでそこに行きましょ、と次ぎの計画を相談。
アイスやキャンディを食べて再び水遊びしていると、東の空が黒雲に覆われ、みるみる近づいてくる。遠くで稲妻、雷音。
人々は降られる前にとそそくさと水から上がる。我々も素早く退散。
車を出して山を下りだしたら見る間に雷雨、豪雨。物凄い雨。ワイパーもろくに効かず、運転するエリザベツは緊張しはじめ、窓から外を見ると道路脇に水が溢れてくる。行きの倍近く時間をかけて、豪雨の中なんとかエリザベツたちの住まいまで帰り着く。地下駐車場は水が溢れて入れなくなっている。それでも小振りになってきたので、車にあった傘に肩を寄せあってエリザベツのおうちへ。ご近所さんは庭でバーベキューなんかしてて、大雨なのになぁと思いつつ挨拶したら、ご機嫌そうなオッちゃんばっかりだった。夕方庭で肉を焼いて食べ飲み、今夜はワールドカップを皆で観るのだろう。
サラたちのお姉ちゃんヨハナが心配顔で待っていた。15歳のお姉ちゃん、いつも妹たちの面倒見がよくって、香音にも優しいヨハナが香音も大好き。数ヶ月ぶりに訪れるとウサギ二匹に加えて子猫が二匹も増えていた。
チビたちは三人で、奥の部屋でDVDを。壁際で三人、一枚の毛布を膝に掛けて、実写版の「長靴下のピッピ」を観る。
エリザベツはワッフルを焼いて珈琲。お腹が減った!と焦るエリザベツに、ヨハナは「子どもたちにも焼いてあげてよ」と届けてくれる。
わたしたちは雨上がりの庭に向かってテーブルと椅子を並べ、エリザベツの義母が作ったブルーベリーのジャムやチョコレートムースをワッフルにべったりと塗りつけて、何枚も何枚も胃に流し込んだ。フランス育ちのスペイン人のエリザベツは、大人に成ってからドイツ語を習得した上長らく仏語の先生もしていたので、わたしの独語との格闘をいつも応援してくれる。彼女が他の人と話してる時はほっっっとんどついて行けないけど、私と話す時はゆっくり、平易に、プレッシャーなく話してくれるものだから自分のレベルを勘違いできるくらい。そして、わたしが語学学校へ行くのを中断したり学校を変更したりするのをいつも、気にかけてくれている。
二十歳前後に英語を一生懸命勉強した頃と、進歩があんまりにも違って大変、と以前ほかの友達にこぼしたら、「それは年齢の問題ではなく、言語の問題よ。英語より独語は複雑だからよ」と言われたことがある。確かに、文法の複雑さと語彙の多さは、英語とは比にならない。ふうっ…。
でもこうして、話せたら喜んでくれる人々がいるのは幸せであるし、向上心を持ってがんばらなくっちゃ。


と、しばしの憩いですっかり晴れやかな気持になって、暗くなる前に帰ることに。といってもすでに夜8時。
今日もまた、泊まってって一緒にワールドカップ観ましょうよ、と言ってもらうが、よく考えたらヴィザの書類も届くはずだし、翌日ゆっくりできないので今日は帰ることに。さすがに疲れた様子の香音と電車で帰ると、途中の地下鉄はちょっと不思議なくらい空いている。9時からと思ってたワールドカップ勝戦、今日は8時からだったのだ。不思議なくらい、オーストリア人が居ない(苦笑)。オーストリアは参加してない、決勝はイタリアとフランス、と言っても、やっぱりみんな楽しみにしているのか。最寄りのランドストラッセ駅で地上に上がると、やはり家々で人が集まってる気配はあるものの、道を歩いている人などほとんど居ない。
うちはテレビ無いしなー、次回は誰かんちに遊びに行くようにしよう、とか思いつつふと、近所のよく行くイタリアンレストランが大型モニターを仮設してたのを思い出した。
夏になると、日本の夏、キンチョーの夏、みたいな、夏祭りとか地蔵盆の「おちつかなさ」が懐かしくなったりするのだけど、そっかこっちはワールドカップってお祭りだよな、と思い、サッカー興味ねぇとか言ってないで子どもにちょっとくらい味あわせてあげようかと言う気になる。「最後のワールドカップ、観たい?」「みたい!」試合はすでに後半戦、レストランは食事を終えた人達がグラス片手に画面に食い入っていた。もう画面の真下しか席が空いてなかったけれど、それでも店内はほとんど静かに観戦中。顔見知りの人を見つけて手を振る香音。外れたシュートにどよめく人々、びっくりして振り向く香音。礼節と秩序を重んじるゲルマンにはジダンの頭突きやはり青ざめられ、レッドカードに静かな拍手が沸いていた。フランスはまだ行ったことないもののイタリアはもう何度も行っているし、自然とイタリアを応援するだろうと思っていたのに、試合運びや選手を観ているとどうも好きになれなかった。ニポン人の血、判官贔屓?(苦笑)
しかし、隠された欲望“イタリアが勝ったら何かサービス?”もあって、試合結果に笑顔で拍手するゲンキンな私。しかし香音は「しろいシャツのひと、まけてさびしそうだね」「この人(仏監督)もまけたの?かなしそう…」と静かになっておる。ジダンの退場シーンなど映ると、「アタマでゴーンってしたから、おこられてかなしそうだね」と何度も。まずい、これではプロセッコが貰えない…と焦った訳ではないけれど、負けたひとも居たけれど、勝ったひとも居て良かったね、とかわけのわからんことを言いつつ帰宅。お祝いのプロセッコも一応貰えて、我々のワールドカップも幕を閉じました。



先週は楽しくイベントが続いて、疲れも溜まりつつ、今週はヴィザ関係の最終提出物も控えており、はい、がんばります。
イベントはエナジーチャージですね。ヴィザ問題を乗り切れたら、ほんとうの夏休みがはじまる…かな!