雪ちゃうやん、雨やん   

どんどん月日が流れて行くよ

この土日は雪でスゴ寒いとのことだが、今日は雨。
雨の日はしっとりとした気分になるか、座ってるのも疲れるほど貧血になるか。
今日は幸いしっとり。
面白いのにどうしても途中で寝てしまっていたDVD「Kitchen Story」を観ることに。
北欧ムービーである。繰り返し流れるテーマソングに内橋さんはクラクラしてる。古めかしいポップソングなんだけど、内橋さん曰く「あのコード進行にあのメロディをのせる発想は斬新!」と。その斬新さはいまいち私にはピンときませんが、ちょっと変わった曲であるのは実感できる。安全安心なので昼間に香音と観ることにしよう。

なんせ、家政学教授が取り仕切る消費者団体のマーケティング調査、「独居男性の台所での活動をつぶさに観察する実験」が物語の土台である。
1950年代くらいの、雪深いノルウェーの田舎、しなびた一軒家に独居する初老の男の台所を、雇われたスウェーデン人男がテニスの審判みたいな高い椅子に腰掛け、6週間に渡って観察する。そう、超アナログ方式。観察者は大きなノートに印刷したキッチンの間取り図に矢印を無数に書き込み、被験者の動向を徹底的に書き込む。ノートは矢印だらけになる。それでも「観察者は被験者と交流してはならない」という厳重な掟があるため、観察者は懸命に存在感を消さなくてはならないし、被験者は徹底的に観察者を無視しなければならない・・・
けどそんなこと徹底できるはずが無い。人間、黙っていてもくしゃみはするし咳もする。言葉を交わさなくっても、ちょっとしたことで人間性を垣間見てしまうことだってある。
ストーリー上では、すでにスウェーデン国内で「主婦の台所動線観察実験」が完了したものとして物語られており、その設定が効いているのか「ありえねえ!」と突っ込みたくなる衝動が湧かない。実は、以前、似たような調査が、ある家庭学書物に報告されていて、それから脚本監督が着想を得たと言うから、まんざら突飛な設定でもないのかもしれない。物語はなんとも牧歌的にのんきに、淡々と、話が進んで行く。

大事な要素として、ノルウェーの田舎のじいさんのところへスウェーデンのさえないおじさんが訪れる、という設定が有る。ま、“ドイツ人とフランス人”とかみたいに、それほど救い難い決裂や対立が有る訳でなく、お互いに仕様がない隣人、親戚、みたいに「スウェーデン人はこれだから・・・」的なギャップが適温で描かれている。
中でも「あ、」と思ったのは、スウェディッシュの観察者とノルウェー爺さんの会話。
スウェーデン人はいつでもそうだ。戦争のときも中立とかぬかして傍観していた」と爺さんが言うと、スウェディッシュおじさんは「その通りだ・・・残念だ」と神妙に言う。するとじいさんは(仕方ない)と言う顔で「話題を変えよう」と切り替える。
お前の国は何もしなかった、というのが“なじり”として成立し、自分の国は何もしなかったという事実が悔恨として残る、こういうメンタリティは東アジアでは見受けられないので、私にはとても新鮮だった。
この映画を見てる限りでは、それが両国の国民性全般に通じるものなのかこのおじさん達だけの個人的なものなのかはわからないし、そこにはこだわらないけれど、監督が文化の衝突を面白おかしく描く人ではないというのは感じられたし、特に特典映像のインタビューからも感じられた。

この日記を覗く奇特な皆さん、おススメです。うちはレンタル屋で借りてきましたよ。



■ビデオからDVDになって「おまけ」を観られるようにはなりました・・・が。

DVDの特典映像ではノルウェー人の監督がストックホルム出身の日本人(らしき女)にインタビューされている。この女は映画コメンテーターと紹介され、テレビの情報番組かなんかで映画のことをしゃべったりしているらしい。Lilico だっけ。なんせスウェーデン育ちというのが「売り」らしく、すぐノ・スウェの対立とか違いを監督の口から引き出そうと意図が見え見えで、監督に向かって愚問を連射する。
しかし賢明にも、「一般論にはできない」「わからない」とつまらなそうに返しつつ、根気よく持論を説く監督。監督業って大変ですね。
女はいかにもスウェのことならオマカセ!って感じで、やたらスウェの特産品の固有名詞を連発するし、「日本人は知らない」と断言することもしばしば。しかしそんな“ローカルネタを上手くさらりとご紹介”なんて徹子みたいな芸も持ち合わせていないので、つまんないことこの上無し。
情けないのは、こんな陳腐なインタビューを「対談」なんてタイトリングしてる日本の制作!あのぉ、監督が女に質問するような場面、一瞬もないんですけど。ただただ、メモを見ながら質問を続けるだけだぞ、インタビューで十分です!


作品本編を楽しめたら、ついついどんな人が作ったの?って興味がわいたり、ただただその作品世界の余韻に浸りたいなあ、なんて思ってついつい見てしまう特典映像。
まともに聞き甲斐のあるインタビューならまだしもなんだけど、特に日本版で飾り付けられたものは内容が薄すぎて、要注意だな、しかし。ひどいもんです。



■売るために仕込んだ飾りつけ、しかし逆効果。

ミニシアター系の輸入作品を日本でパッケージングする時、かなりの確率でみられるイメージの改竄。
カイザンなんて言ったらちょっと高級だけど、つまりは「なんでこんな邦題?」「何この、作品の雰囲気をまったく加味しないトレーラー!」「なにこのデザイン!」・・・借り物ながらDVDを叩き付けたくなるほどのイラダチ。要は、「売れるように」してるんだろうけど、バカすぎやしないだろうか。
この映画の予告編は、わざわざ日本の女優(たぶんあれ、冬ソナの吹き替えで声だけが大人気になっちゃった人。べちゃついた甘ったるい声。ちなみに本編にはおばさんかお婆さんがチラッと映る以外、若い女はまったく出てこない!)に、本編にはあり得ない甘ったるい、ありきたりなコピーをしゃべらせて、全体的に心温まる、友情とスローライフ讃歌!みたいな印象を作り上げてる。もう、全然ムード台無し!
MENU画面だって、スチールをベタに切りぬいて、変なコメディタッチで作っちゃってもう、ヒドいのなんの!ああいうキッチュなタッチが好きかどうかは別として、本編には全然シンクロしてないの。そういえば「DOG VILL」のmenuはきれいだったな。ってことは予算の問題?だったら余計、もっと頑張れ、職業デザイナー達!! 



■バカな邦題は昔から有りますね。パクリ丸出し放題の邦題、の歴史は長い。恥ずかしい。

最近観たもので印象的な邦題のバカっぷりでは、「Horns and Hallos」というドキュメントの邦題。この映画、昨年末にDVDで観て、このダイアリーにも書いたけど、全体的に沈んだトーンで、事実だけを記録することに専念したドキュメントらしいドキュメント。だったにもかかわらず、ブッシュ告発モノだもんだから、付けられた邦題はなんと
「解禁! ジョージ・ブッシュ伝 噂の真相
である。パッケージのデザインまで丸出しでマイケル・ムーア剽窃、マイキーごめん、って感じだ。Horns and Hallos の作者達にもごめんなさいだろ、これ。いったい日本のこういう業界って、どうなってるの?
本来作品が獲得するであろう潜在的なファンと、剽窃した方の作品が好きなファン、どっちも怒らせてどーする!