コルシカ書店でダンス、ダンス、ダンス!

なかなか厳しい現実を前に難航していた部屋探し、なんと本日かなりスムーズに決定しました。東方の貧乏なミュージシャンの皆さん、7月以降でしたらかなりラグジュアリーにお泊まり頂くことも可能と思われます。ばんばんご利用ください。なんとウィーンのど真ん中、シュテファノプラッツから一駅、歩けます。徒歩1分という激近にbioショップ(自然食屋さん)も複数あり、めちゃ便利なところです。

朝から金曜配刊の個人広告誌の住宅情報をもとに、先日のレセプションで知り合ったまるちゃん(元バリバリの新劇女優@こっちで活動中!)とアーミン(なんと「元」旦那。)に強力な協力を得られる運びと成る。ウィーン式のゆったりたっぷりのブランチを終えたらアーミンちまで伺うことになった。
が、しかし。
ダメ元でもちかけた現在下宿中の当家を7月からお借りすると言う話が、なんとあっけないほどすっかりと通ったのです! ありがとう、皆さんの祈り!
エリザベートと話している時点では夫の意見を尊重したいがそれが未知数だったし、果たして金額の折り合いがつくものかというのもまったく不明なところでもあったのですが、ベンハートはいともクリアに交渉をまとめあげてくれました。7月から彼等は本格的にルクセンブルグにゆく。ウィーンで音楽家として活動しているエリザベートは拠点としてのこのアパートを確保したい。しかしルクセンブルグにもイタリアにも(エリザベートの実家)住まいがある彼等は、ココをそのままキープするのは負担が大きい。夫は「もういらんやん」と言い妻は「でも・・・」と悩み、しかし退去3ヶ月前通知が原則だから、いたずらにねばって借り手を捜す訳にも行かない。一方我々は不動産屋を通すと恐ろしく高い税金と、miniminiとかエイブルがびっくりするような手数料がかかる現実を前に途方に暮れていたところ。ここは素敵だけど広すぎるし、この広さにしては安いと思うけど我々の予算には高すぎる、というのが現状であった。が、ふたつある大きな部屋のひとつを彼等がキープし、その面積に準じて(簡単に)算出した金額を彼等が負担する。となると、なんと素晴らしいことに我々の予算におさまってくれるのである! この幸運、ヤバすぎます!! ここは少し変則的なレイアウトの住まいで、もともとは二つの部屋だったアパートをぶち抜いている。その関係で奥の大きな部屋を彼等の部屋として通常ロックアウトしたとしても、生活上不便は全く無い。というより「広すぎる感」が解消されて「お手頃感」さえ生まれるではありませんか。
明日夕から一旦、ヘルゲが借りてくれている短期貸しアパートに移る。もう前払いしちゃってるし、内橋さんが日本に戻る前に三人でゆっくりするのもいいし。そして20日、ここへ戻り翌日内橋さんを送り出す。それから約3ヶ月、アダ母子と香音母子の共同生活があり、7月中旬にはアダ母子をルクセンブルグへ送り出すことになります。好都合なことに、香音とふたりっきりになる前に大先輩と住めるので、彼女等がいる間に住まいのこと近所のことなどすっかり教えてもらえる。彼等はここに10年以上住んでいて、徒歩2分のところにある小さなマーケットには馴染みの人々が週末市を出す。中には彼等のウェディングケーキを作ったおばさんの素晴らしいスイーツセラーもあり、エリザベートは近いうちに紹介してくれると言う。なんと心強いことでしょう。
ほんのついさっきまで、ウィーンの現状を前に暗澹たる思いだったので、この幸運の有難さと有意義さが痛いほど身にしみる。もし、最初から簡単に話がまとまっていたら、どれだけラッキーであるか認識できなかっただろう。この一週間の不安や苦心にも値打ちを感じることができた。人生、無駄な経験は無いものですね。

そんなワケで、かなりラクになった我々は足取りも軽くまるちゃん(先日のライブパーティで出会ったレディ)を尋ねに出掛ける。もう10年も前に単身渡欧してきた大先輩である。現在は離れて暮らしておられるが元旦那さんの現地人アーミンさん宅にいるとのことで訪問。劇作家のアーミンさんは温和で親切で心配性で、面立ちがそこはかとなく「落語家さん」みたいである。ASAKUSAが似合う外人さんに成ること是請け合い。『千と千尋の神隠し』をドイツ語で見せて頂きました。香音さん、大喜び。アーミン師匠はその間飲み物を気遣い、ケーキをふるまい、おまけにホットサンドまで作ってふるまってくれる。まるちゃんと日本語で盛り上がっていると、香音と遊んでくれたりもする。師匠のドイツ語も、わからぬままに香音は「ダスがいい!」(これがいい、ってことね)なんてちょっとずつ吸収しはじめて。ゆっくりとした素敵な午後を過ごし、雨のなか師匠の車で送ってまでもらいました。車中、シルヴィアより電話。アパート確定を報告。これからはご近所様です。よろしくどうぞ、お願いします。そしてそうこうしてる間に車は到着。ありがとう、まるちゃん、師匠、これからもよろしくお願い申し上げます。

夜はアダ一家と共に、今夜はエリザベートの作によるグラーシュである。絶品。これまでどこのグラーシュもちょっと塩辛すぎてヘヴィだった我々だが、もう泣いて喜ぶようなうまさである。添えられたポレンタに衝撃。敬愛する須賀敦子先生が名作『コルシカ書店の仲間たち』などで何度も語られた北イタリアのマンマの味です。そうか、こんな感じだったのか。
食後、ベンハートがかけた音楽に、なんと香音が踊り出した。ほんとに「ダンス」している。アダもいつしか踊り出し、あっちへ行ってもっと踊ろうという。近い将来我々が借り受ける部屋にはなんとミラーボールがあり(笑)、アダはそれを回して踊りはじめる。もちろん立って観ていることは許されず、大人がこっちへ来ませんようにと祈りながら一緒にはしゃぐ。香音も大喜びで「だんすだんす!」と叫びながら踊っている。アダはいつものグッドセンスでふざけながら色んな振り付けを編み出している。6歳、8歳、34歳がともに大はしゃぎ、ダンス、ダンス、ダンス! な夜であった。