フランス人と韓国人

ドイツ語学校の、今月のクラスメートのひとり、フランス人。
まだ17,8だというのにかなり「フランス人」してる。

欧州に明るいアメリカ人などがよく、
「フランスは素晴らしい国だ。フランス人さえいなければ」
などとコケ下ろすように、「やな奴」と括られることが少なくないフランス人。
鼻持ちならない、というのがいちばんパシッとくると思うのですが、しかしながらそもそも「鼻持ちならない」って、説明するのかなり難しいですね。変わった日本語です。


で、フランス娘。
まだ十代で高校生なのであるが、音楽科に通っているのか、自己紹介では「私は芸術家。シンガーです」とくる。「笛」という単語が出てきたら、頼んでもいないのにモーツァルトのオペラ『魔笛』をハミングで唄ってみせて「ご存知?」とくる。芸術とかゲイカルチャーとか、北欧のどっかとかアフリカとかの豆知識を嬉しそうに、お幸せそうにご披露しよる。それが表層的な、あったり前やんけ、みたいなことでも。目が合うと、「はいせんす絵本」みたいな笑顔でこれまた“ご存知?”と言いたいかのようにつぶらな瞳をパチクリ、パチクリ。
聞いてもないのにご披露されたお話によると彼氏はスペイン人で、お互いスペイン語で話すらしい。クラスでもスペイン人女性の隣に陣取り、休憩時間にはペルー人くんを放さん勢いでスペイン語ドイツ語。担任もスペイン語を話すので話もはずむのか、休憩時間はこの4人ですこぶる楽しそうである。
しかしまったくかかわらないのが韓国人。
なんでしょね、もう、断絶とでも言えるくらい、交流がありません。よく観てると、どっちも目もくれないのです。
特に、クラスには松坂慶子似のコリアン声楽家(学生)がおられるのですが、この姉ちゃんがまたきっつい人で、最初こそ「シンガーなの? 私も、シンガーなのですよ」と歩み寄ったものの、フランス娘の残酷な黙殺(微笑みをたたえてうなづいただけでスルー。直ちに先生に話しかける)以降、彼女もほかの韓国人陣も、誰も相手にしなくまりました。


で、この、メロディちゃん(フランス娘の名前。本名らしいが)、私とは授業中ならば目が合うことはしばしばなのだけど、なんとあの子、朝も帰りもろくに挨拶したことがないのである! もちろん、私は後ろ姿にむかってでも「おはよう」と「また明日」は言うのですが、これまであの子は言わんのだな。休憩時間に廊下ですれ違う場面でも、目を合わさない。どうやらこのクラスでは日本人にも韓国人にも、その模様。
どうなってるんでしょうねぇ。頭の中。


ちなみに上記のメンバー以外は韓国人(計5人)日本人(計3人)がいてそしてミャンマー人のおっちゃんとナイジェリアのおっさん。このふたりはたまたま両方カソリック神父だと言う。あら、神父様と学友関係とは恐縮です、汚らわしくってスミマセン、なんて思ってたけど、このふたりがまた困ったふたりで、無神経と言われざるを得ない発言(しかも押しが強くって)が韓国人女性たちの顰蹙を買い、結局4つしかないテーブルのうち、彼等ふたりのテーブルに誰も座らなくなってしまった。同国人が固まるのはみっともない、と誰もが百も承知の中、若きハングルギャルズはかたくなにひとつのテーブルに固まっているのでした。


このドイツ語学校は毎月更新なので、月初めは必ず新しい人が入ってくる。休まず続けてると何人かと一緒に持ち上がることになるのだけども、たいていは14人中の半数が新規の顔ぶれとなる。先生は変わったり変わらなかったりなんだが、雰囲気も変わるし授業運営のペースが変わることもしばしば。こうして毎月何かをリセットしては繰り返すのって結構疲れるんだな、これ。新鮮でいい、とはもちろん言えるんだけど、ただでさえ濃縮授業だから疲れるのに、慣れない人と常にコミュニケーションしなくちゃいけないのに段々辟易してきた・・・。次ぎから次ぎへと行ったことない国の人と一緒に勉強するのは面白いしせっかく知り合ったからちょっとでも仲良く、とか無意識に思っていたけど、実際にはかなり気をつかってつかってつかってつかってそして疲れる・・・ということが多い。
その疲れる原因と思しきは知らぬうちに染みついていた癖、みたいなもので、「他人を不快にしてはいけない」という刷り込み。これはおそらく、日本人はピカイチに強いんじゃないかな。
例えば一緒に問題を解いて私が正解で相手が不正解だと、相手に無用な劣等感を与えないように謙虚に振る舞ってみたりする。逆に相手の方が理解が高く、二人組作業のはかどりが悪い時は申し訳なくなったり萎縮したりする。これって結構ジャポネな我々、もしくは万博直後世代まで(?)ならばよくあること、普通のことなんじゃないでしょうか。・・・わたしは実は、完璧にこの繰り返しでして、嗚呼、もう疲れました・・・。
(ちなみに他の皆さんは、自分の正解はもちろんはばかりなく大感激してるし(もしくはこっちの胸にザクッとくるくらい「(正解で)当たり前やんけ」って顔)、不正解でも開き直ったりするくらいですわ。なんや皆さん剥き出しですなぁ、って思うけど、こっちが逆にはこっちがくるみ過ぎ、ってことか。)



ヴィザ取得までは不安の中とりあえずはと必死に勉強してたけど、お陰様でなんとか取得できてからは「のんびりいこう」と決心できたし、来月も南米旅があるからお休みするし、あとはクラスの人々にも精神的に翻弄されたりしないようにマイペースで勉強しなくちゃいけないなと、思っておるところでございますでごじゃりますー。