初夏の公園で、キャンディ・キャンディな気分である。

 Blog を分離してからと言うもの、こちらハテナはすっかり香音ちゃん通信になってしまいました。ま、それも良かろうと思うとして、今回も香音ネタです。

 本日は、9月から行くペテルスガッセのクラスパーティに行ってきました。
ウィーンの学校は年度末の6月に先生・生徒、親・家族総出で食事会したりお祭りしたりの交流があるようで、内容は学校やクラスによって違うみたい。レストランに行くこともあり、学校内の設備で行われることもあり、そして開催時間も色々で、レストランでディナー、なんていうのも聞いたことも。そして、当クラスはウィーンが誇る巨大公園Prater の緑地の一角でピクニック形式の持ち寄りパーティとのことでした。
実はここ数週間、香音はたいへんひどい咳に悩まされており、一度は救急外来まで利用。「ウィルス性のものでしょう」とニッコリ言われ帰されたのだけど、その後の経過を見守りながらネット独学してみるとどうやら…百日咳!? しかし、そう気づいた時にはいわゆる「回復期」に差し掛かっていたようで、そうなったら抗生剤も効かない、時どき襲う発作的なヒドい咳に耐えながら“100日”過ぎるのを待つしか無い模様。百日咳はレントゲンでは見つけられないらしく、血液検査で診断するらしい。救急外来に行った時は咳き込んで呼吸困難になりそうだったのだけど、ほかに何も症状が無かったのでレントゲンしか撮らなかったのだ。
とはいえずっとホメオパシーのレメディを色々組み合わせて与えていたので、百日咳にしては落ち着いていたのかもしれない。で、百日咳を疑いはじめてからは、レメディもぐっと絞り込んで与え、その頃からの回復は早かった。
そういうことで、与えても悪化しないだけで症状は抑えられないですよと言われながら抗生物質を与える愚を行わず、不安を抱えつつもホメオパシー一本で治せそうで心底ホッとしてるんだけども、やっぱり学校に行ってはいけないとフォアシューレをずっと休ませていた。ほんとは昨日くらいから大丈夫だと思われたが、念のため今日までお休みにさせた。

そういう訳で、4週間弱こちらに居た内橋さんがお昼に日本へ出発するのを見送ってからさてご用意。
一品持参。薄ら寒い春が遅くしつこかったウィーンも、先週あたりからすっかり夏到来であるからして、お料理を持参するのははばかられる。日本を代表する子どもに人気の行楽弁当と言えば「唐揚げ!」であるが、私は唐揚げを作ったことが無い。唐揚げモドキならいくらでもありますが。じゃやっぱりアレですよね、アレ。ということで、アレをささっと作って持参。
Prater は歩いて行けるところではあるけれど、巨大なので今回のミーティングポイントにはバスで行かねばならない。
地図で調べて慌てて出かけるも、なんと本日(きのうから?)アメリカより皆が大好きなあのジョ〜ジBがウィーンに来てるそうで、バスの路線が軒並み変更されている! そんなこともつゆ知らず乗ったバスはあらぬ方向へ進み、しかしはじめて乗った線なので異変に何も気づかぬ我々が座席でニコニコしていると、運ちゃんが「ここまでだよー 休憩だよー」と振り向いて言った。
慌てて降りてみたらそこは見知らぬ街角ではあったけども、途方に暮れる5秒前に「カノーン!」と声がする。
見回すと、そこには9月から入学するクラスの二組の母子があっちとこっちに居た。縦割りクラスなので、大きいお姉ちゃんと中くらいのお姉ちゃんが香音ににこやかに近づきご挨拶。クラスにはいちどだけ「次ぎの一年生達の訪問日」に二時間ほどお邪魔しただけなんだけど、ふたりともしっかりクラスメイトとして認知してくれている。三組の母娘で現地へ。

バスは林を抜けてPrater の中を東へ走る。炎天下の目的地では、すでにたくさんの親子連れが集まっていた。
クラスは20人ちょっとで、加えて弟や妹達が何人か来ている。パーティの場所は林の中の緑地帯で素晴らしいロケーション。木陰のテーブルでは、すでに親達が持ち寄った食べ物や飲み物が文字通り所狭しと並べられはじめている。夏日の午後三時なので飲み物と果物が多いが、生野菜とまな板と包丁が何組も持ち込まれているのは当地風。作ったものを残されるのが異常に嫌いな私は(わがまま!)、例のアレはあんまり多く持ってこなかった。でも、頂き物のオカカ系ふりかけの混ぜご飯と梅&ゆかり味のと、二種類のアレは大好評だった。3合分なんて、あっという間になくなった。そう、おにぎりを持って行ったのでした。梅&ゆかり版は完全菜食者の方にも喜ばれました。が、「Oh! Sushi!!!」と喜ぶ子どもに何も言えませんでした。スミマセン。大人には説明しましたけども。こちらでは、誰が教えたのか巻き寿司をみんな「Maki」と呼びます。なんだか西洋人の方がわたしより業界人っぽいです。そしてこのMakiは何て言うの?とか聞かれて、これは違うんだ云々、と言ってもいまいちピンと来ないだろうから、材料も作り方も食し方も、ちょっとだけ、でも決定的に違うし、何より私は個人的にMaki は嫌いでOnigiri は好きです、とキッパリ言うと、よくわからないなりに納得してもらえます。

んなことをのたまいながら様子をうかがい、少しずつ人々と話してみますが、香音はお水を頂いておにぎりを二個ほど頬張ったら、一目散に子どもたちの居る方へ行ってしまう。それまでに子どもたちは、次々と香音に声をかけて「げんき?」なんて訊いてくれてます。美しい。私はと言うと、まるで静かな東洋のレディを演ずるように、微笑を称えて大人しくしてるのだけども、ウィーンへ来て幼稚園、フォアシューレ、そしてこのクラス、ここではじめて親達とガンガン英語で話したのでした。いやどこでも英語を話せる人はたくさん居て、ドイツ語を母語としない人も常に何人も居るんだけど、今日は“基本的にドイツ語で話しましょう”というムードが無かった。それよりも、交流することが大事である、とでも言うように。ドイツ語を母語としない人が4分の一くらい居て、その人達はドイツ語で話したり英語で話したりしている。もちろん、友達が集まってこう言うことは当たり前にあるけれど、“親が集まった所”でははじめてのことだったので、なんだかとってもホッとした。
そして誰もが口々に、このクラスは素敵よ、先生は熱心だし、大きな家族みたいに機能している、子どもたちはみんな本当にハッピーよ、この4年間が素晴らしいものになるのは確実よ、楽しんでね、などと言ってくれる。みんながクラスの回し者である(笑)。
ご存知の通り、香音は“オープンマインド”がメガネをかけて歩いてるような子だから、取りあえず近づくし取りあえず名前訊くし取りあえずハローである。一緒に遊ぶ、というのがまだまだ下手で、近くで嬉しそうに見てるばっかりであるけど、そんなあの子が近づいても、他の子どもたちはとても自然に受け入れている。警戒されないし、疎外もされない。誰かが「裸足になると気持がいい」と教えたみたいで、気がついたら香音も裸足になって遊んでいた。誰かが「カノンは水遊びしてもうビショビショよ」なんて言いに来てくれるので、それじゃあと他の子たちみたいにパンツ一丁に成らせるともう、本人大喜び。男の子達が大きな水鉄砲で遊んでるのをキャッキャと見ていて流れ弾に当たる、間違ってぶつかる、なんてことがあっても、あの子はニコニコ笑ってるから「あっちいけ」なんて言われない。いくつかのグループに分かれて遊んでは、また解体して、また新しいグループが自然にできて遊ぶ、大きい子が大人とじゃれてふざけるのを眩しそうに小さい子が眺めていたり、小さい子を囲んで大きい子たちが競うように世話しながら遊んだり。面白いことに、各学年6人前後居ると言うのに、似たような背丈や体格の子どもが目につかない。それに髪のタイプや色を考え合わせると、ほんとうにみんなバラバラだ。香音だけが違うとか、とかく意識されているとは到底思えない。このクラスは希望しないと入れないので、どの親も考え有って選んできている。だから、香音に歳を聞いてこんなに小さいのに7歳!と発覚しても、誰も顔色ひとつ変えない。ゆっくりでも必ず大きくなるもんだから、なんて言って、いい顔して笑いかけてくれる。
こういう場所を独語でangenehm と言う。

先生は担任おふたりと、ウーシィというパートタイム教員の三人。
担任は今日思ったが、「キャンディキャンディ」のポニー先生とレイン先生とちょっとイメージがダブる。子どもたちの様子も、「ポニーの家」みたいかな(←原作知らなければ馬小屋みたいだが)。ポニー先生に似たドリスは、いつも笑って泰然としていらっしゃり、レイン先生似のスージィは感激屋さん。そしてウーシィはちょっと派手なオバさんなんだけど、そこはかとなく情に厚い人という感じで、そして本当に子どもたちに愛されている。そう、子どもたちは、この3人の先生達と別れ際など、ほんとうにしっかりとキッスして、熱いお別れをするのだ。「また明日!」って言ってるんだけど(笑)。



そんな楽しい時間の中でいちど、香音がお水を飲んで咳き込んで、とっても苦しそうにえづいてしまった。私とポニー先生とで背中をさすったりして見守りながら、そばで心配そうにしていた子どもにナプキンを持ってきてと頼んだ。えづくのと咳で、香音は涙と鼻水をしたたらせていて、そしたらいつの間にか心配して傍に来てくれていた誰かのお母さんが、素手でその鼻水を拭いてくれるではないか。さっと指先でぬぐって、芝生で軽く拭く。鼻垂れさせたままナプキン待ってた阿呆なお母さんの立場無いヤンケと赤面しそうになりつつ、有り難いことよと痛み入る。
帰りはすぐそばに住んでる男の子のお母さんの車に乗せてもらう。
3年生の彼はダウン症なんだけど、実はなかなかの美男子。頭文字が同じなので“アンソニー”でいいかな。(そういえばカリビアンの美少年が3年生に居るけど、彼はステアって感じだった)
そのアンソニーのお母さんと車中話していて、ウィーンに来たのは香音のためだと言うと、「正解よ あのクラスに入ったのは完璧。あそこは素晴らしいわよ」と力説してくれたジェスチャーが、美味しい!のジェスチャーだったので可笑しかった。
こんな、誰もが口を揃えて満足して、誉め讃えるクラスなんて。
これで誰も私に聖書とか壷とかススメないんだけど、どうなってんのかな?
(あーもう、お願いだからヴィザが無事更新でけますように!)