初夏だけど年度末の週末

 火曜日に参加したペテルスガッセ校の終了パーティに続いて、金曜日は今行ってるvorschule の終了パーティがあった。
朝はいつも通り8時登校して、午後2時に一斉お迎え。お迎えと言っても、教室のそばにある小さな集会スペースに親達が集められ、指定された場所に座ってしばし待機。50人ほどが座れる程度のごく小さい規模だけどそこはコロシアム風に成っていて、上段に座る様指示された親達が全員座ると丸く空間を囲む状態になる。そこへ子どもたち登場。手作りのお面やリボンで飾った子たちは、ニコニコ顔できちんと並んでやってきた。マリア先生に手を引かれる香音は特にご機嫌で、私を見つけると黙ってニッコリ手を振る。幼稚園の頃ならきっと、こういう場面では「ままー!」とかしゃべってしまったものだけど、一応黙って皆と同じように振る舞おうとしてる。先生がギターを弾きながら皆で歌を唄い、先生の朗読にあわせて小さなお芝居をする。子どもたちは配られた楽器を手に、効果音を担当したり、何人かのお遊戯があったりそしてさいごにまた合唱。
先生はふたりで手分けしてギターを弾いていたけど、テープやCDを使わないのが良かった。

劇や合奏の難易度は極めて低く、しかも子どもの台詞もみんなほとんど言えていない(苦笑)。でも、練習の時はちゃんとできてたのも想像がつく。すんなり台詞が出てこなかったら朗読してる先生が一緒に言ってくれる。言葉がほとんどわからないので文学的な難易度がよくわからないけど、習熟度を披露するためのものではない様だ。ただ、コード進行、歌のメロディは、日本の童謡や唱歌よりちょっとだけ複雑だったりフォークソングっぽい印象があった。
親達はお互いの子の写真を撮り合って、とても和やか。送り迎えで顔見知りに成ったもののほとんどちゃんと知らないままの人が何人かいたけど、この時間で誰が誰の親か、と言うのがまったくわからなかった。日本の幼稚園だと、こういうのはすぐにわかった。顔が似てる云々より、親の感情移入や反応が激しく、我が子が台詞を言ったり失敗したりすると、もう誰がその子の親か一目瞭然にわかるほど派手に反応していたからだ。ここでは、誰かが失敗したりチャーミングなことをしても、誰もがそれを笑い、楽しんでいるので、見かけに特徴の無い親子は誰が誰やらわからなかった。そして、そんな中で、時どき場違いな反応をしたり可笑しな振る舞いをする香音であったが、(いやぁ、うちの子が…スンマセンネ)みたいな顔をしなくていい感じがして、わたしはとても気楽だった。それよりも、(他の親達と同じく)どの子のことも心を込めて観察するってことに留意しなくちゃ、と感じて、全体の観察を楽しむことができた。
途中で親から4人の先生達へのプレゼント授与も合って、数十分の集いのあと教室へ移動してティパーティがある。
今日、子どもたちが買い出しをして、テーブルセッティングなども皆でしたらしい。どう考えても、不完全なお遊戯よりこのテーブルセッティングの方が、高度な文化成熟と思えるんだけど…(笑)。
香音もみんなと同じように、ケーキをもらって自分の机に運び、むしゃむしゃと食べる。そのあとはクラスの中で、子どもたちは自由に遊び、親や先生は談笑してる。ここは16人ほどの生徒たち全員分の机があるスペースと、カーペットが敷かれたフリースペースの他に、二つのテーブルで全員がランチできるキッチンのスペースがあり、そして二階建ての室内遊具がどーんと置いてあってという、なかなか広い教室。全員の親がそれぞれ談笑していても、子どもたちはそこそこの時間遊んできられる。
香音はやっぱり、まだ知恵も言葉も足りないので、ゲームとかごっこ遊びにもうまく混じれないけど、それでもゾロゾロと走り回る時はイイ感じに混じってたり、友達の妹(赤ちゃん)を何人かの女の子で囲んで遊ぶのに混じっていたり、いつまでも楽しそうにしている。ついこの間まで行っていた幼稚園の、最終日の自由遊びを見ていたけど、その時よりも断然楽しそうだ。
私はと言うと、あと一週間だけあるので、あんまり終わりの挨拶してしんみりするのもなぁ…とか思ってしまい、香音が仲良くしているルイザちゃんのお母さんのアンゲラやヤン君のママのヴィオと夏休みの話をしたり冗談を言ったり、他のお母さんともおしゃべりしたりして平和に過ごす。半分くらいの子どもたちはここの小学校の普通の横割クラスに行くらしい。香音が別の小学校へ行くのは残念だ、と何人ものお母さんに言って頂いた。みんな理由を聞きたがった。これは私のリクエストを基にして、区の教育課の偉い人とか香音と会った校医さんとかが会議して決めたことで、香音にとっては3区で一番良いチョイスだと言われている、担任とも会ったしクラス訪問もして、今のところとっても満足してます、と言えるだけ説明してみる。もちろん、せっかく出会えたこのクラスの素敵な子たちと別れるのは、ほんとにほんとに、残念なんですけれど…と。
まだまだドイツ語がダメだし、ここでは英語を積極的に話してくれるのは若い先生だけ(!)なので、やっぱり人々との距離の取り方が難しいのは、最後まで克服できなかったのかもしれない。先が長いので、あんまり必死に仲良くなろうとするのはやめておこうと思っているんだけど、こうしてこんなに香音を居心地よくいさせてくれた小さなこの社会に、きちんとコミットできなかったような気が残るのは、ちょっと残念ではあった。香音は結局5ヶ月だけだったけど、最初から居てもここは一年(いや10ヶ月だな)。小学校の一年生に成るための準備の一年でもあるので、どこかしら“通り過ぎるところ”と言う雰囲気がある気がする。子どもも親も、やっぱりあっさりしてる。先生達は、ずっとこのクラスばかり見ているのかどうか知らないけど、きっと先生には違った感慨もあるんだろうなと思った。

まだ来週もあるから、と思いつつ先生達に簡単に挨拶していると、主担任の若い先生がこう言った。
「私は…カノンはこのクラスでハッピーだったと思います。いつもとっても積極的で、いつも笑っていた、ほんとうに陽のひかりのように。一年間通して来ていたら、もっとたくさん学べただろうし、もっといろいろできたでしょうし、それは残念だけど、でもこの数ヶ月で本当に彼女はたくさん学びましたね。ペテルスガッセ校に行ったら、先生達も素敵だし、良いクラスだし、きっともっといいと思いますよ」
今日ここで先生と泣いたらあかんやろー、と思ったので、しんみりしないように心がけ、最近香音が家で「Eine Kleine Nachtmusik」を鼻歌で唄うこと、誰の歌?と訊くと「mozert」とはにかみながら言うのだ、など言うと、先生は「ここで皆で聴いたんですよ!」と喜んでくれた。

そろそろ帰ろうかと言うとき、香音が「おともだちたちだよー!」と廊下でびっくりしている。
見ると、ペテルスガッセのクラスの上級生達と先生がカップアイスを食べながらニコニコ笑っている。
このクラスはこちらの学校の施設をとても頻繁に利用しているのだけれど、今日は放課後に卒業する子たちと次ぎの上級生と先生と、十数人で“ボーリングをしていた”らしい。(校内にボーリング施設があるのかどうかは未確認)
その帰り、ちらっと香音に会いに寄ってくれたらしいのだけど、絶妙なタイミングで、なんだかとっても嬉しかった。
現在が過去として終わろうとしている時、未来が予告編を見せてくれたみたいだった。

長い夏休みまであとほんの数日。
ドキドキのヴィザ更新とかもありつつ、美しくvorschule の日々を終え、いい夏を過ごし、そして満を持して9月の入学を迎えたいものである!






(※デジカメを忘れたのでまた写真を撮れませんでした!ごめん! アンゲラが写真を撮ってくれてるはずなので、貰えたらupします。貰えたらね・・・。
ちなみに、この夏大阪で維新派公演があるからと言って我々の帰国を穿っている皆さま、無理でっす。ヴィサ更新と保険関係でどえらい出費に祟られた我が家でして、夏はウィーンで地味に暮らしております。遊びに来るなら今ですよ!)