ピカピッカの一年生♪

 こっちは入学式らしいものはなく、いきなりクラスに。新一年生の親はもちろん、全員ではないけどたくさんの上級生の親も登校して教室に入る。香音のクラスは縦割り学級、一年生から四年生まで24人がひとつのクラスにいる。担任はふたり、加えて非常勤の先生がひとり。
家から5分ほどバスに乗るけれど、この日は凄く混んでいた。うちから学校までにほかに知る限りで二校小学校があって、そのどこもが新学期初日である。フォシューレで知り合った新一年生達も、親と一緒にウキウキと登校するのをたくさん見かけた。香音も何となく“特別な日”のムードに触発されてゆく。

学校の玄関も廊下も階段も、ひとだかりで溢れていた。3階の教室まで行くと、担任の先生たちが満面の笑みで生徒達を迎えていた。子ども達一人ひとりと握手し、ハグして“元気?”と声をかける。丁寧だなぁと思っていたら、私にも「Kae、元気でしたか? あぁ、カノンのパパですね!」とグリーティング。
教室で簡単に先生が挨拶をしたら“今日は一時間弱だけですので、時間になったらした(学校の玄関)にお迎えにいらして下さいね”と、親達が追い出される。
一応、“カノンはひとりで大丈夫かしら?”と訊かれるが、ま、大丈夫でしょうと教室をあとにする。
簡単に親達と挨拶をして近くを散歩する。どこのカフェも近隣小学校から時間つぶしに出てきた親で溢れていて笑える。新しいクラスメイトの親達はみんな気さくそうで感じが良いが、わたしもついて行けないドイツ語に内橋さんは閉口してしまうので、今日は夫婦でおとなしく(苦笑)。
一時間後、子ども達は先生と出てきたんだけど香音は最後尾。なんと、最後の最後にわぁっと泣き出してしまったらしい(大苦笑)。スージー先生に「カノン、泣きたい時は泣いていいのよ。でもね、叫んだりするのは明日からはやめようね」と言われていた。「ないていいの?!」香音はそこにビックリしていた。

続いて、ホルトに三人で向かう。
まぁ一種の学童である。ごく一般的なシステムでは、小学校はお昼まで。昼食はおうちで食べるというのがオーストリアの長らくの伝統であったらしい。午後まである学校も増えているけど、香音の小学校は午前校だ。で、親が働いていたりなんやかやで午後子ども達が過ごすのがホルト。学童というにはもっと学校然としていて、昼食、宿題など勉強などちゃんと時間割に従わないといけないし、先生もいるしクラブがあるところもあるとか。
香音が行くのは小学校の担任の先生が紹介してくれた“イエスの心”と言う名のカトリック校だ。樹木希林みたいな、興味深いシスターが担任で、クラスは男女分けられている。そう、女子クラスに行くのである香音は。
希林先生と面談して、登校は明後日水曜からにして頂く。希林先生の助手であるレナーテ夫人が小学校まで迎えに来て下さる。シューレのクラスからも数人一緒にここへ、レナーテ夫人と一緒にやって来てすぐ食堂で昼食を頂く。そのあと宿題をして遊んだりおやつを頂いたりしてそれぞれのお迎えを待つのだ。食いしん坊の香音は「おともだちとランチを食べる学校」として、ホルトは一発でお気に召した模様。


たっぷりの書類を手渡され家路に。一日目無事終了。無事のうちかな。
午後、香音は随分とおだやかで、たっぷり三人で散歩して、すこぶるご機嫌に過ごす。散歩の途中でノイバウガッセでチョコレートケーキ食べたりして。とはいえ今日は小一時間だけだったし、あぁ明日からどうなることやら。いやしかしシューレもホルトもほんと、素敵だ。メデタイメデタイ…などとホッとしている深夜、香音が寝床から呼ぶ声。行ってみると、目は閉じたままだけどしっかりした口調で、「ねむれないの」と言う。いやさっきまでグースカ寝てたじゃない、と思いつつなだめていると、おもむろに「がっこう、いかない。あしたがっこういかない」と言う。がーん。おい待ってよと思いつつ、グッとこらえて「わかった、わかったよ」となだめる。
ショックを受けた私はすっかり寝る気も失せてしまい、明朝どうなることやらと思いつつ取り敢えず気晴らしに先生に手紙を書く。英語で(汗)。
やはり無意識にプレッシャーをかけていたかな、自分で自分にプレッシャーをかけたりしてたのかもな、気長に気楽にと本人も思える様に、気をつけてあげたいです …などなど。そして気弱な私はろくに眠れず朝を迎えるが、意外と香音はケロッと起きて来て「「がっこういく〜!」と笑っていた。