歩くスローライフ少女、得をするの巻。

 水着を服の下に着てバスタオルも持って独語学校へ。終わったら室内プールに行って泳ぐぞと構えたが、授業が終わる頃えらく寒くなってしまい断念…。運動不足は散歩だけでは解消できないのになぁ。

今日は鼻みずも止まってすっかりご機嫌に登校した香音さん。
今朝もフォシューレ友達のルイザとバスで会って、通学仲間として足どり軽く。信号を渡ると今年一緒にクラスに入学したエリアス君が先を歩いている。先に気づいたエリアス君が振り向いて「カノンだ」と笑ったので、思わず香音も「エリアス!」と駆け出す。笑顔でおはよう、と右手を差し出すエリアス君。さわやか!w 教室に着いてからも、次々クラスの子達が笑顔で挨拶してく。フォシューレでは、挨拶する子としない子がいたけどここでは誰もが笑顔で声をかけてくれる。先生たちといえば毎朝挨拶しているというのに、まるで長い休み明けであるかのようにワァッと明るい笑顔で挨拶してくれる。思わずこちらもにっこりしちゃうし、これだけ毎日ちゃんと挨拶していたらきっと、心配事があったり問題があった時きっとちょっとした心の移ろいが微妙に挨拶で読み取られるんじゃないかと思う。元気で挨拶する、ということが重要なのは、そうしていたら元気じゃない時きっと何も言わなくてもSOSが読み取れるようになるからなのかもしれない。

午後3時を過ぎてホルトへお迎えに行くと、香音がテラスから廊下に飛び込んできた。やたら嬉しそうに「まま! わたしもテラスであそんでいい?」と威勢良い。午後のヤウゼの時間が終わって、お部屋で歌を歌ったりした後はしばらく建物の中で自由時間なようだ。靴を履き替えて先生にご挨拶してからテラスに繰り出す香音。たくさんの女の子達が、テラスで縄跳びしたりして遊んでいる。テラスにはベンチがあってママはそこで見ていて!と言う。なんだかとても嬉しそうに、香音はウロウロしたりぴょんぴょんしたりしている。以前ならただ見てる、ってことが多かったんだけど、今日はちょっと違った。見たところ、香音の今日のテーマはさしづめ“うしろ”。駆け回る子のあとを追って走る。大縄の順番待ちするこの真後ろに並ぶ。大きいボールに取っ手が付いていてそれに乗っかってぴょんぴょんしてる女の子達の後ろを同じように(ボール無しで)ぴょんぴょんしながらついて行く…。そんなことを思いつくままに、えらく楽しそうにやっている。女の子達は振り向くと香音が楽しげに真後ろで自分の真似をしてるので皆、思わず笑い出す。あげく、そのぴょんぴょんボールのグループが止まってるところへ行き、何も言わずある子の乗っかってるボールに勝手に自分も腰掛けている。一瞬「どいて」と言いそうになった子も、振り向くと香音が「やっほー!」なんて言いながら自分のお尻の横に腰掛けてるものだから怒ることもできず苦笑する。香音は小さくて言葉もままならないから、みんなは「もう、おかしな子ね。しょうがないわネ」なんて感じで、お姉さんっぽく苦笑してくれるのだ。ヴァルドルフの幼稚園では、入ったばかりの時に居た女の子達はなんだか凄く冷たいしキツかったので大変だったけど、ここでははじめからとても居心地が良さそうだ。きっと、樹木希林似の担任のシスターがうまく香音をグループに招き入れて下さったんだろうと思う。
ご機嫌良くテラス遊びを切り上げて、今日は歩いて帰る。香音とだと20分以上かかるけど、午後から随分温かくなって、こんなに温かい日はあと幾日あるかわからないから、元気な日は歩きたい。
半分くらいのところでキャンディショップがあるので、そこで飴を一つ買おうね、と約束しながら歩く。手をつないで歩いていたら、ちょっとだけ香音の手が大きくなってる気がする。キャンディショップは空いていたので、香音に自分で買わせることにする。無糖の小さなペロペロキャンディを選んで、ちょうどの小銭を持たせたらすぐさまレジに駆け寄って「いひ つぁーれ!」私が払う!って感じか。前のお客さんにお釣りを渡しつつお店のおばさんは「はい、ただいま、お嬢さん」と笑う。高くて届かないカウンターに投げるように小銭を「びって!」と出すと、おばさんが「ちょっとまってね」と引き出しを探る。怪訝そうな顔で待つ香音に、おばさんは小さい袋に入ったグミをサービスしてくれる。どこへ行ってもオマケを貰う果報者の香音だが、例に漏れずめちゃめちゃ嬉しそうに受け取る。まま、こっちを先にたべるから、こっちもあとでたべて、いい? だんけしぇーん!!

晩ご飯。ゆっくり噛みしめて大食する香音とおしゃべりしながら食器洗い。ふと香音に、「ホルトでブランカ先生(希林先生)は香音のお隣に座ってくれるの?」と訊くと、香音の顔がパッと明るくなって「そう、そうなの」と笑う。「香音はいつもどこに座るの?」ともう一度尋ねると、「ブランカせんせいのおとなり!」と嬉しそうに。じゃあ、毎日香音のおとなりに腰掛けて、香音のお仕事をみてくれるんだね、そうよ、そんなんだよ。ひとりちょこんと小ちゃい香音は、希林先生のおとなりでマスコットみたいにちょこんと座り、丁寧に丁寧に、毎日少しずつ見て頂いているのだった。そうして大事にされる面白い子だから、女の子達はみんな、笑ってみてくれているのだった。