快晴の木曜。あーはじまった、と思えた日

 今日は今日とて。
朝、たっぷり寝て気分良く目覚めた香音さん、ご機嫌良く出発。通学に使うバスはこの時間、5〜7分に一本来る計算になっているんだけど、今日はいつもより1.2本早い便に乗れたみたい。ちょっと空いている。けど、学校につくともう何人かの子ども達は登校していて、先生達も勿論お部屋の中で花を生けたり子ども達を迎えたりしている。
上着を脱いで上靴に履き替えて、リュックを持ってお部屋に入る、という毎日の動作が、いつうまでたってもさっさとできない。朝は次から次へとやってくる子ども達が気になって仕方ないのだ。香音が到着して支度する間に、何人もの友達がやって来ては声をかけてくれて、そしてお先に行ってしまう。そんな中に、ホルトで見かけた女の子が何人か、「あ、カノン、おはよう」と声をかけて通り過ぎる。

教室に入ったら、すっかり「学校の子」モードの香音はすこぶるあっさりと「バイバ〜イ」と私を送り出してしまう。名残惜しい、もうちょっといさせてよなんて思うのも内に秘め(涙)、先生に挨拶して学校を出る。

独語学校にいつもより早く着いたので、久々に人見知りを封印してクラスメイトと話をする。
こんどのクラスはアフリカンが5人、トルコ人が二人、ヒスパニッシュの南米系が3人にタイ、フランス、セルビアそして日本人の私。
そしてもうひとり、クラスに居るのがボスニア出身の彼だ。ボスニアですよ…(遠い目)
こんど、捕まえてゆっくり話します。


コース後は散々散歩して帰り、午後お迎え。
朝学校で挨拶した子が、今日も私を見るなり「香音は今あそこよ!」と教えてくれる。帰る支度をはじめたらまたどこからともなく現れ、靴を履き替えるのを「手伝ってもいい?」なんて言いながら助けてくれる。そう言えば、前から何度も声をかけたり世話を焼いてくれていた子だなと気づく。さて、帰るという段で、希林先生は「さよなら」の握手をしようと香音に手を差し伸べる。左手を出す香音に希林先生は「いいえ、握手は右ですよ、右」と教えて下さる。言われたあとは、他の先生にも実践する香音。そしてもう一度先ほどの女の子と遭遇すると、彼女は「バイバイ」と言いながら香音にハグした。欧州と言えど、子どもは挨拶でハグをすることはほとんどない。愛情表現である。ちょっと照れてる香音も可笑しかったけど、いつも香音の周りではこうして「優しい子」が必ず浮き立って見えてくる。そして私は、その子の幸せを手放しで祈ったりもできる。

朝はすっかり肌寒いのに、お昼頃からはTシャツで十分なくらい熱くなる今年のウィーンの9月。夏の名残のおかげで、ちょっとだけ新学期の時間がゆっくり流れているように思える、快晴の木曜であった。