昨日忘れ物をとりに行った学校で、“明日新しいおサカナが来るよ”と教えてもらってから、ずっと楽しみにしていた香音。少し早めに行こうねと言っていたら、本当に朝早めに起きて来た。金曜はヤウゼもいらないし、ドイツ語コースも休みなので朝はちょっと余裕がある上早起きしてくれたから、朝ご飯をしっかり食べて余裕を持って出かけてもまだ早めに学校に到着できた。

7時45分に到着しても、一番乗りにならない。早い子はもう来ていたし、あとから来た子もサササーッと上履きに履き替えちゃうので廊下でおいてけぼり。それでも大喜びで教室に入っていく香音。スザンネ先生は朝からこれまたハッピーな感じで立ち話。クラスの上級生のテレーザちゃんが「動物の絵本を読んで欲しい?」と香音に訊いている。もちろんヤァ!とYesの返事する香音を女の子達が奥へ連れてゆく。小さなキッチンのある小部屋には作り付けの二階があって、そこにはクッションやブランケットとぬいぐるみがあり、そして子ども達用の蔵書がある。先生としばらく話していると、香音が「ままいるのー?」と声をかけてくる。覗きに行くと、4人の女の子達と香音がそこに居た。香音は真ん中で手に絵本を持っていて、さっきのテレーザちゃんはぬいぐるみのゴリラを手に「カノン、アソボウヨ!」なんてして、構ってくれてる。ひとしきり見物して「じゃあね」と降りてまた先生とおしゃべりしている間も、それから結局帰るまで、上からは始終ふざけ合う笑い声や楽しげな嬌声が聞こえていた。ほんとうに皆に可愛がられてるなーと安心しながら、学校をあとに。


午後、お迎えにいく頃は連日シャツ一枚でも陽射しを強く感じる。
ノースリーブやキャミソールの人もまだ居るくらい。こんなに気温も高いことだし、金曜だし、帰りにアイスクリームをねだられたら今日は買ってあげようとか思いつつホルトにお迎え。
今日は図書館に行って本を借りた、と興奮気味に語る香音。靴を履き替えるのもままならないほど、はじめての図書館の日が嬉しかったようだ。帰ってその本を読もうね、とか言いながらの帰り支度の間、その廊下を女の子達が何人も通っていった。同じクラスの子達は次々に「チュス、カノン!」と声をかけてってくれる。チュスって言うのは、まぁバイバイ、ですね。中には手をとって握手してく子も居る。隣のクラスの子が通りかかった時は、私に何かを話しかけていた。これは結局わからなかったんだけど、香音がか、もしくは逆に誰かが、頬に触るか叩くかしてふざけたみたい。あら、香音が手を出してその苦情かしらと思ったら、最後にその子は香音をじっと見て「かわいいなぁ〜」と呟く(苦笑)。結局詳細がわからなかったけど、最後に希林先生が何か言って終わったみたいなので、ま、聞かなかったことにしようと独り手打ちで決着(大苦笑。一応本人に確かめると、叩いてない、手をこう振っていたのだ、と言う)。

あきらかに疲れていない様子の日は、バスで帰るか歩いて帰るか聞いてみるんだけど、今日も「あるくほうがいい!」というのでお家までぶらぶら歩いて帰る。
陽射しは眩しいけど風はひんやりしてるので気持ちいい。いつものように話しかけたり質問したりしながら帰るが、今日はすこぶる機嫌がよろしく、自分から図書館がステキだった、楽しかった、本を借りた、お友達たちも借りていた、こういう本を借りた、マルティナちゃんが今日は来ていたetc.すごく楽しそうに話す。しかも、スキップしたりはずみながら歩いている。話しながらちょっと私がふざけると、身をよじって笑っている。途中でキャンディショップまで来たら、またひとりでお店に行っていつもの小さいペロペロキャンディを買ってくる。今日はお釣りもちゃんと受け取って。

町田に居た4歳の、やっとこさ歩きはじめた頃からほんのつい最近まで、歩いても疲れやすく歩けなくなるとしつこくごねるので、出かける時はかなり気を使った。買い物でも散歩でも、どこまでだったら歩けるか、復路のこともずっと考えながら歩くのは結構気が重かった。やっと歩けるようになったのでしつこくバギーを持ち歩くのも気が進まなかったけど、小柄とは言え10数キロを延々抱っこして帰るのも疲れるし。そんな頃、軽やかに歩く知らない子達の足どりがとってもうらやましかった。歩くだけで精一杯の香音は、キョロキョロしたり弾んだりする余裕など無かったし、随分と大きい子達の振る舞いに見えていた。
それが、今日はすっかりそういう足どりで、歩きながらぴょんぴょんしている。おしゃべりに夢中になって弾みながら歩いている。帰り道に教会の前の市場を通りかかる頃には、わたしの手からすり抜けて、笑いながら駆け出していた。自分で買ったキャンディを頬ばりながらケラケラ笑い、足どり軽いスローライフ香音ちゃんが行く。