寝床泥棒

クリスマスの豚を焼く会は万事うまくゆきました。
ビリーは自宅にあった植物にクリスマス風の飾りを付けて、その下にみんなのお互いへのクリスマスプレゼントを置くのですが、そこにはさりげなくクリストキンドから届いた縦笛もありまして、しっかりばっちり香音も喜んでおりました。しかし連日の楽しい日々のお陰で疲れ気味の香音、遅くまで居たけど泊まらずに帰ってきました。
翌日25日は10区の友達母子と合流し、「happy feets」という、ペンギンのアニメ映画を見ましたよ。2年生の、この映画を選んだ張本人のアンリちゃんは、中盤の冒険シーンですっかり恐れをなしてしまい、外で待っていましたが(涙)、香音は最後まで楽しみました。ペンギンがソウルナンバー唄ってタップダンス踊ってました。
その夜はアンリちゃん宅でお鍋を頂き、香音はアンリちゃんとお風呂までご一緒してお泊まりさせて頂きました。
夜更け、ママとふたりでいろいろ話せたのは良い時間でした…。
翌朝気持ち良く目覚めさせて頂き、ゆっくりランチした午後、こんどはミチとミア父子と合流。オッバーラとかいう温泉地の広大な公園を散歩したけど寒かった! 

…小学校に入ってはじめての休暇でありますが、ふと気づいた。
普段、日々に追われてるから、休暇に入ると急に連絡取り合って、翌日のことも心配せずに遊んだり行き来するのね。そりゃそうよね。休みに入ってウィーンから出る計画も無いのでどうなるのかなと思ってたけど、それはそれで日々慌ただしく楽しく過ごせるもんだと小さな発見…。


しつつ、今日はおうちでゆっくりして、大変なことになってる住まいを掃除しなくっちゃ!と思いつつ、…結局半分もできなかった。
しかもちょっとだけしたことというのが、夜になってからである(大苦笑)。もしもこのダイアリを覗く、生真面目で悩める若きママなどがいらしたら、どうか見て頂きたい。人間どうにかなるもんです、と(大苦笑)。

いやどうにもなってないのかもしれないけれど、最近笑えることがありまして。

8歳になって、はじめて子どもと寝室を共にしてるんです、我が家。

産まれてすぐに「三歳までに心臓手術しますよ」と言われ、子ども病棟のちびっ子達が消灯後しくしく泣くのを目の当たりにした我々は、せめて一人で寝ることに慣れさせてあげようと、生後3ヶ月くらいからひとりで寝させるようにしてました。
納戸みたいな小さい部屋があれば、そこを香音の寝室として、ベビーモニターを駆使して。おかげで一人で寝るのが当たり前で、赤ちゃんの頃の夜泣きを除くと「じゃあね、おやすみ」で眠れるようになった香音。時々旅行で川の字になるのをワクワクしていました。
が、自宅での怒濤の誕生会を終えて、住まいの都合も考え合わせての大英断で、「奥のでっかい部屋で三人寝よう!」と言うことにしたのでした。そのうち本気で個室を与えるべき時が来るまでの数年が、逆にラストチャンスだわと気づいて。

元の借り人のエリザベツが置いてってるセミダブルのベッドを香音のにして窓辺に置き、わたしらのでかいベッドを運び込む。
真ん中の部屋が良い感じでリビングルームらしくなる。奥の部屋の一角は、香音の本棚やらいろいろを運び込んで香音の部屋らしく。
このようにしてはや一ヶ月。
変なことが起こるようになった。
夜中、さてと自分も奥の寝室へ行くと、香音のベッドが乱れておる。布団をかけ直してやろう、と持ち上げるとなんと、香音が居ない!べ、べ、ベッドから落ちた?!見回しても居ない…がーん! おろおろしながら電気を付けると、えええッ、私のベッドに天下太平な寝顔の香音さんが! ちゃっかりお布団もかぶって。寝かせた時は、今にも寝入りそうな顔で機嫌良く自分のお布団にくるまっていたのに、いつの間に、何でまた移動を? その寝顔のご尊顔っぷり、なんかほんとにめでたい寝顔なのであります。その日は仕方なく電気を消して香音の横にこそこそと忍び込んで寝たのですが、明け方の寝相の悪さと言ったら…。

2度目はまぁいいが、3度目となったある夜(連日ではなかった)、いややっぱり自分のベッドで寝させなくちゃと思い立ち、抱いて移すべくそっとお布団をはぐと、まだベッドを移動してすぐだったのか、まことにキレイに身体を横たえ、両手を胸の上で重ねてさえいる(笑)。そのお顔、やはり天下太平、ご安泰…。

さすがに翌日はすっとぼける香音に問いつめた。
私「昨日の夜も、ママのベッドに行ったでしょう? ダメですよ、どうして?」
香「えー… いいなぁとおもって…」
私「な、なにが!?」
香「ままのべっど」
私「なんで?」
香「おおきくって」
私「香音のベッドも充分大きいでしょうが!」

ち、小さい頃は、上の姉妹と一緒のベッドで寝さされてた子がいましたよ。今でもいるはずですよ。それに比べたら、なんて贅沢な話でしょうか!
とにかく、理屈も抜きにただただ“自分のベッドがある者は、自分のベッドで寝るべきだ”と主張し、夜更けの悪しき小さな冒険を阻止するべく言って聞かせました。

しかし、それから数週間ほどした本日さきほど。
寝かせた後に洗濯物干しを寝室にそぅ〜っと持って行くと、あれれ、お布団がへん。まさかと振り向くと、すすすっとお布団に潜り込む小動物…発見!これッ! お布団をはぐと、やはり両手を胸の上で重ねた高貴な寝顔が…しかし、熟睡はしてなかった様で、顔を覗き込むとくすっと笑い出すのでした。抱き上げてベッドへ戻すと、あー残念とばかりにため息をつく香音さんでした。
深夜の小さい寝床泥棒に、ちょっとだけ手を焼くウィーンの冬真っ盛り。