年末年始の大感謝祭

28日はお誘いもご遠慮して自宅で過ごし、29日には内橋さんがウィーンに戻り、30日は買い出しなんかしつつ静かに過ごして31日、ウィーン初体験の大晦日は怒濤であった。

まずは午後、ミチ家のご招待で“年越し蕎麦”を頂きに。
野菜の天ぷら、お蕎麦、おはぎ、その他珍しいミチのお料理に舌鼓。ご一緒した“子ども4人+現在第五子ご懐妊一家”とも大いに楽しみ、素敵な忘年会になりました。
夜7時を回る頃から、窓の外では打ち上げ花火やロケット花火の音がチラホラ。このままこちらでのんびりいダラダラ過ごさせて頂くのも素敵とか思いつつ、後ろ髪引かれて抜かれてつるっパゲに成りながら次なる宴会、バロックフルート奏者のアンゲリカ宅へ。彼女はメキシコ人。会った人は誰もが一瞬目を疑うほどフルーダ・カーロにそっくりな彼女! 小さなアパートを薄暗く、中南米の雰囲気バリバリで飾り付けたお住まいはとってもムーディで素敵。奥の小さな部屋はディスコと化し、玄関先の小さなダイニングキッチンは人がほんとにすし詰め。それでも顔見知り何人かと挨拶を交わし、知らない人ともちょっとずつ知り合いつつ、間もなく新年カウントダウン。
ここのアパートは屋上の小さなスペースを住人に開放しており、梯子を上がると360度ウィーン市内が見渡せる。酔いも手伝って足許おぼつかない面々、お互い助け合い運び合って(笑)屋上に上がり、どこかのビルに投射されるデジタルの時報を見つけて間もなくカウントダウン。街中はすでに花火で大いに賑やか。3、2、1、ハッピーニューイヤー。互いに抱擁や乾杯、キスの応酬で新年を祝う。街中の空ここかしこに打ち上げ花火。近くの建物からロケット花火が上がるのもよく見える。それら花火のほとんどがプライベートなんだそうで、市民有志と言うか、やりたい人たちが自発的に遊んでいるのだ。街角でもあちこちでロケット花火や爆竹を若い奴等がまき散らすように放っている。市街中心部にはそれが危険だからと、みんな口を揃えて行くなと言うくらい。
幸い子連れの我々は、気心の知れたシルヴィア、ディータやビリー、ブルグハルトやアンゲリカ、ベーンナード達にそのまた友達たちと安全に、しかも花火もばっちり満喫して、幸運なシルベスター(大晦日)となった。
ミュージシャンがいっぱい集まったこのパーティでは、さすがに子どもは居なかったんだけど、奥の部屋でダンスタイムと相成ってからはうちのおチビは断然の大活躍であった。がきんちょダンスと舞踏とお遊戯(笑)。アンゲリカの人脈か、ラテン系のダンス部情熱系みたいな男女もいたんだけど、香音はすっかり彼ら彼女らの仲間となっていた(笑)。国境を越えるスローライフ少女(笑)。
新旧おり混ぜたダンスナンバーで、有り得ないほどみんな楽しく踊り倒す。
去年は友達が死んだり、友達が悲しんでいたり。いや、もうそう言えばここしばらく毎年そうなんだけど、年を取って“友達”の意味が“生きながらえる者同士”という意味にシフトしはじめると、彼ら彼女らがしばしの間めでたいめでたい、ええじゃないかええじゃないかと踊りアホるのを見ていると、取りあえず踊る、と言う所作の感慨深さにふとタッチする。いつかはそのうち、自分だってあっち側へ行く。あたしが先に行きそうなもんだったのに。と、誰もがそれぞれ、口にする。弔うなんて上等なことは言えないけれど、馬鹿みたいになって謝るよ、ゴメンよ、ダーリン…。
「クソみたいな音楽って、こうやって馬鹿みたいに踊る時のためにあるんだね」とディータが言った。
そう言いながらくねくね踊るディータをひょいと持ち上げてひとりで胴上げしたいくらいに思いながら、私も踊った。


…んなことして、元旦早々朝帰りしてるもんだから、せっかくの「元旦、シャンパンで乾杯しにおいで」と言ってくれたご近所の友達宅に結局は午後に行った。
香音のフォシューレいちばんのお友達、ルイザんち。ぐさぐさでぼーっとして、情なぁい形相で登場した我々だったけど、元旦午後のお茶の時間をしばし楽しませて頂いた。が、そのあと約束していたべつの、幼稚園からの友達宅訪問は、お互いが「シルベスター疲れ」だったので先送りに…(苦笑)。もしかしたら、不信心なウィーンっ子のダメな新年の過ごし方を踏襲してしまっているのだろうか、我々は…。


想定外にしれーっと元旦を過ごした我々であったが、2日にはウィーンのお仲間に声をかけて「お雑煮の会」としゃれ込んだ。
母と内橋さんが用意してくれた丸餅、そして白みそで、“ニッポンの新年料理”として雑煮を振る舞った。集まったのは大晦日も一緒にいたいつものメンバーであるが、白みそのおつゆは意外と大好評。遅れてきたアンゲリカが「あんまりお腹がすいてないのよ」と言うと、「モチズッぺはスーパーレッカ(訳:超ウマい)だから食べなくちゃ」とか説明している。サラダとか切り干し大根の煮付けに加えて新年の試み、ローストビーフ(自作)を振る舞ったが、こちらはかなりレアでギリギリ感があった。みんなはそれでも喜んで平らげてくれたけど、生まれてはじめて作ってみた私は気が気じゃなかった(ッて、そんなものをお客人に…(以下略))。


そして今日三日は、ドイツ語と日本語を交換授業してるアンディと約束していた「書き初め」を敢行。
ミチ家と夕子ちゃん家を加えて、子ども4人、大人5人(プラスなぜか寝に来た病人がひとり居た)でまたもや宴会。「名誉」「夢」「無垢」「銀行」「新規一転」「不屈」「筋トレ」「無臭」など、あらゆる今年の抱負を大人たちはしたためた。(※いま変換して気づいてしまったが、新規一転は正しくは「心機一転」なのだな…。大失敗)
昨日もうひと固まり作ったローストビーフに本日若干手を加えたら、きのうを上回る出来上がり。ちょっとはカンがついてきたか。今日はお澄まし汁のお雑煮にしたところ、子どもたちも大喜びで何度も何度もおかわりしてくれた。おかげで夥しいほどの数だったお餅も、あとほんの少しとなってしまった。素晴らしい。
ゲンキンというか面白いもので、勝手気侭だったガキどもも、お口にあうものをお出ししたらこれまでと態度が激変して私に格段愛想が良くなったからまた可笑しい。子どもの美味しかったの笑顔は良いモノです。うひひ。



書き初めとかお雑煮なんて言いながら、その合間にはパンやクッキーかじって掃除もしないで遊んでるんだから、到底お正月らしくなんか無い。
しかも今朝は洗面所の配水管が壊れてしまって、内橋さんは配管系の工務店探しに半日費やしていた。ぜんぜんお正月らしくなんか無い。
でも、クリスマスから新年、親しい人たちと何度も集まっては美味しいもの食べたり飲んだりして、時にはふざけたり踊ったりして、
それって無言のもとに「お互い元気で良かったよね、また今年もね、よろしく」なんて気分で集まってんじゃないかな。
だとしたら、年中は忙しくって会ったり会わなかったりの者どもが、ちょっと照れくさそうに酒瓶ぶら下げて訪ね合うって、充分、
めちゃ“お正月”なんじゃないかなと、思ったりなんかもしたりしましたよ、皆さん。


後で写真あげます。