「殺すな」

 2月に友達とスロヴァキアのブラティスラヴァへ日帰り、チェコプラハに小旅行、そして3月はイースター休暇を使って西仏のナントへ行った。どれも格別に楽しかったけど、ナントは渋さ知らズ紹介で知り合った人が、大切な友達になったと言えるほど、思い出深いものになった。

旅の合間に日本から送られてきた約1000枚100kgのCD受け取りに関する騒動、キッチン壁の水漏れ事件などなど、はたまた“人疲れ”も重なってうんざりして、途方に暮れて、なんかもう何もかもイヤーン!と、人生に疲れてしまいそうなことも重なっていた。が、ナントの癒しが効いたみたい。ナントから帰ってからもしばらく鬱々とした気分だったけど、それでもちょっとずつ小さい嬉しいこと、有り難いことで持ち直し、自分のゲンキンさにも呆れたりしつつリカバー。うむむ、いろーんなことを含めて、なんか最近やっと、世間でよく聞く「ありのままを受け入れる」の極意がわかってきたようなそんな、気がしたりなんかして。意外とね、そうじゃなかったのかも。私とは。でも意外とね、やっとそうなのかも、私でも。


ちょっとしたこと、ちょっとしたことなんやけどなぁ。


ストレートに言うと、チビがどんな高学年になって、どんなティーンになって、果たして大人に成りきれんのかと、漠然と不安で仕方なかった。
刻一刻とそれが近づいてくるようで、こわかった。今思うと尽く失礼なことだが、“この子はマブダチが作れんのか”とか、そんなことも心配したり…。
ひょっこりここだけ読む人が居たら変な妄想に聞こえるでしょうけど、障害児の親なんてそういうもんですたぶん。


まぁ何やかや、大したこともないけどちょこちょこと色々あって、そんな小さい「あっ…」の積み重ねがあって、「あー、そんな心配って、失礼やったなぁ。」と思うに至る。



…心配の種を拾いだしたらきりはない。
でもそこら中に散らばる種すべてが、芽を出して育ってしまう訳ではないのだ。
さらに、それらの種の中には、意外と結果オーライの花を咲かせるのがあったりすら、するらしい。




****************************



そんな中。


無理心中的猟奇殺人ではないか。


祖国よ、嗚呼、祖国よ。立ち籠めるその雲の黒さはいったい。どないした祖国よ。


もの凄いですね…。びっくりしました。


2月は足立区でしたっけ、そして昨日は文京区ですか。お父さんが家族を殺すのですか。家族を憎んで、とかでもないんですよね? どうしたんですか、もう…。
心中と言うスーサイドは日本語にしか無いスタイルで、翻訳不能だと言いますね。確かに見当たりません。
恋人とのそれは江戸時代に流行期すらあったらしいが、後生儚んで親が子を道連れというのはいつからか。高度成長期あたり?
世間とズレて、隔絶感と閉塞感、事業に行き詰まりましたか、お先真っ暗でしたか。
しかし、昔話で知る限りは、寝ている子の首をしめるとか、なるべく恐怖や痛みを抑えて(そのつもりで)一思いに…というのが親のナサケだったんじゃないでしょうか。それが、なんですか、刃物振り回してるんですかお父さん。
たまたまとはいえ、老人、妻、コドモを殺めたものの、いちばん上の子は取り逃がしていると言う。何をか言わんや。
通り魔が弱者を狙うと散々言われているが、家庭内マーダーもその通りではないか。


実は、自分が生まれる前であったが、わたしは自殺者を身内に持つ。自殺者は幼い親族を道連れにしたという。悪いけど、それ、殺人である。
また、別の親族は未遂者でもあり、未遂により助かった元道連れ者の複雑な心境も伝え知る。
かといって、過剰に感情移入や同情する気など毛の頭ほどもないけれど、少なくとも対岸や異国の話と言えるほどの安全な距離感は感じ得ない。

溺死した人がいる湯船に今も浸かっている気分、というと、趣味が悪すぎるか。

けど、このお風呂は「内風呂」じゃなかったんだ。

でーっかいでーっかい露天風呂で、湯気で見えないほどの距離で、あっちでもこっちでもみんな、トチ狂ってんじゃないのか。
何やってんだみんな。

あるところでは親が子どもの頭を押さえつけて溺れさせてる。
あっちでは若い奴が見ず知らずの誰かの足をお湯の中で引っぱって沈めてる。
誰かがお湯の中でリストカットしたから、お湯が恐ろしい赤色に染まる。
自分すら、私だって、無意識か(いや直視せずに)何度も何度も泳げない我が子の手を振りほどきそうになっているではないか。
趣味の悪い夢みたいな現実の中で、寂しくぷかぷか浮いているのが、現実の我々なのだ。



実はこの2月の事件を知ったのは、悪名高い2ちゃんねるだったんだけど(恥)、たくさんの人が「いったいどうなってんだ」「ほんとに世の中おかしくなってしまった」と嘆いて書き捨てていた。
一方ミクシィにあふれるコスメとか痩身のバナー広告や、相変わらずテレビ関連の話題が上位を占める日記のテーマランキングなどに比べたら、そっちの方がまだ人間味があると思った。



ま、スポーツ刈りと丸刈りくらいの差しか、ないのかもしれないけど。